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こころをなににたとえようー

心を入れ替えてまっとうな小説を書こうと思った初夏。
以下に記す。

彼女は、いつだって拗ねたような顔をしていた。
あんなに可愛い顔をしているのに。
笑えば、さぞかし素敵だろうに。
いつだって眼を細く、鋭くさせて。
不服そうに、唇を引き結んで。

どうしてだろう?
彼女が笑うときなんて、あるんだろうか?
笑うとしたら、どんなときなんだろう?
どんな表情で、彼女は笑うんだろう?

それが、彼女とおなじクラスになってから、ずっと自分が抱いていた疑問だった。
だから……。

オレは、その疑問を解決してみることにした。

★  ★  ★

「ちょっと、話があるんだけど」

昼休み、グラウンドや体育館に遊びにいくやつらや、屋上や裏庭なんかで小粋なランチを楽しむやつらなんかで、教室に人気がすくなくなるのを見計らって、オレは彼女に話しかけた。

「……? なあに?」
「お兄さんのことで、ちょっと」

彼女は、ああ、そのことね、といった様子で、軽く眼を伏せる。

「姉のこと?」
「あの人は、自分のことを兄だっていってるみたいだけど」
「……そうみたいね」

ここでオレは、彼女に誤解されないよう、前置きすることにした。

「勘違いしないで欲しいんだけど、オレはキミのお兄さん……お姉さんのことを、決してバカにしたりとか、そんなつもりはないんだ。ただ……」
「ただ?」
「もし、手助けできることがあるのなら、力になりたい。ただそれだけなんだ」

彼女が、オレのほうを見る。

「手助け……?」
「性同一性障害、って言葉がある」

ぴくん、と彼女の肩が震えたのを、オレは見逃さなかった。

「きっと、キミのお姉さんは、その、性同一性……」
「違う」

きっぱり、彼女は否定する。

「あのひとは違う。そうじゃない」
「認めたくない気持ちはわかるけど。でも」
「だから、違うのよ」

彼女は静かに、首を横に振った。

「あのひとを、そんな言葉で飾るのは、その障害で悩んだり苦しんだりしている人々に対して、とても失礼なことだから。あのひとは違うの。ちっとも悩んだり苦しんだりなんかしてないし……そもそも、あのひとって○○○○だもの」

え?

「いま、なんて……」
「だから、○○○○。生粋の○○○○。ママのおなかに大切なものをたくさん忘れてきた、そんな人なの」
「え、えーと」
「第一、あのひとが姉じゃなく兄になっているのは、べつに心のなかは男だからとか、そんな理由じゃないのよ? アレ、ただ単にわたしが欲しいからなのよ? おもに性的な理由で。姉妹よりも兄妹で陵辱したほうが興奮するからなんて、まったく○○○○としかいえないような理由で」
「……」
「この前なんて、あのひと……」

と、すっかり黙りこんでしまったオレの前で、なおも自分の姉……兄? について、彼女が語ろうとしたときだった。

「妹さーん!」

と、突然、横から女子が会話に割って入ってきた。
どこかべつのクラスの生徒なのだろうか?
まったく顔を見たことがない女子だった。
その、褐色の肌をした女子は、脇にいるオレのことなんかそっちのけで、彼女に向かって敬礼する。

「お待たせしました! なにかご用でございましょうか!」
「うん。待った。ずいぶん遅かったわね?」
「す、すみません。ちょっと、お姉さんが離してくれなくて……」
「姉が?」
「ハイ。ゲームつきあえって……」
「ああ……あのひと、友達いないから。ずっと?」
「ハイ。モンスターをハンターしまくりです」
「ふうん。それにしても……」

彼女が、褐色の肌の女子の、その立ち姿を、上から下まで眺めた。

「めずらしいわね。あなたがそんな、女の子らしい格好してるなんて」
「まあ……叙述トリックも破れたことですし」
「? なんのこと?」
「あ、こちらの話です」
「こちらの話……ね」

なにやら、意味ありげに彼女が小首を傾げる。
そのしぐさに、褐色女子があわてだした。

「あのときなにがおこったのかとか、知らないほうがいいですよ? ガチで。ディアブロ、ウソつかない」
「なにもいってないでしょう? そのディアブロうんぬんはちょっと訊きたい気もするけど。なんで突然、そんな名称を呼称し始めたのかとか」
「いわゆるひとつの、ふぃーりんぐってやつっス」
「フィーリング、ねえ……」

ややあって、褐色女子が、彼女に向かって尋ねた。

「あのう」
「うん? なあに?」
「これはディアブロ的忠告だと思っていただければ幸いなんですが……やっぱり、こんなまわりくどいことなんかせずに、妹さんが自分で願いを叶えたほうがいいんじゃないかなーって」
「どうして?」
「だってお姉さん、ぶっちゃけ、○○○○じゃないですか」
「そうね。○○○○ね。悪魔もびっくりなほど」
「そうっス。ディアブロもマジ引くくらいに○○○○っス。あのひとにまかせたら、叶う願いも叶わないです」
「だから……わたしが願えって? だって、わたしはもう願ったでしょう? おにいちゃ……姉のところにいって、あのひとの願いを叶えてあげてって」
「あ、それ、クーリングオフします。というかさせてください」
「だめ」
「えー。マジっスかー」
「マジです。ちゃんと叶えてあげて……あのひとの願いを」
「うーん、そのあたりディアブロどーもわかんないんですけど、なんでそんなまわりくどいことするんですか? わざわざ、お姉さん経由で、自分をモノにさせるなんて……」
「……乙女の心は複雑なのよ」
「ニンゲンの考えることは、ホントにわかんないなあ……ところで、わかんないといえば、今日わたしを呼んだ理由はなんでしょう?」
「あ、そうそう……ごはん、買ってきて」
「は?」
「だって……なぜかわたし、お肉が食べられなくなっちゃってるんだもの」

と、彼女は笑った。
にっこりと。
それはもう、素敵な笑顔で。

「とくにモツ類がダメで。それになぜかしら、体重も増えているのよね、やけに」
「それはまた……不思議ですねえ」
「うん。とっても不思議。だけど、たぶん、こういえば、悪魔さん……ディアブロさんは、わたしが食べられるような、お肉がいっさい入ってない食事を、買ってきてくれるような気がするんだよね」
「……」
「『姉が姉なら、妹も妹だ』……って、顔に書いてるわよ、ディアブロさん」
「えーと、いってきます! 超特急で!」
「はーい」

猛ダッシュで消えていった褐色少女に、彼女はにこやかに手を振る。
そうして振り向いたときには、もう、あの素敵な笑顔は消えていた。

「あ、ごめんなさい。……なんの話をしてたっけ?」

オレは、黙って首を横に振った。

世の中には、明かしちゃいけない疑問というものも、あるらしい。
そのことを胸に刻みながら、彼女から離れた。
窓の外に、さっき見た褐色少女が、背から黒い羽根を生やしてゆく姿が見えたような気もしたが……もちろん、黙って首を横に振って、頭のなかから追いやった。即座に。



ぬう。
こんどこそ萌やしてやろうと思ったのに、どうもスベってるような気が。
というかホラーになっちゃってるような気が。
あ、前回の妹萌え小説の続きでーす。
あとにはたぶん続かないでーす。
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プロフィール

西野かつみ

Author:西野かつみ
西野かつみ(にしの かつみ)



もの書き。男。
第1回MF文庫Jライトノベル新人賞で佳作受賞。
2005年10月25日、受賞作の「かのこん」でMF文庫よりデビュー。
2008年3月現在、気がついたら「かのこん」を10冊以上出してた! びっくり!
いまのところまだ続く予定。



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これはドラマCDとは違うんですが。
アニメにともなって放送されたネットラジオを収めたもの。
耕太役の能登さんとちずる役の川澄さんがあまりに仲が良くて、聴いてるとにまにましますぜ。

アニメの後日談的内容。
ちょっとえっちでちょっぴりおバカ。かのこんの本質をあらわした内容でございます。

かのこん1巻の内容を声で。
「ああん、耕太くぅん……」「はわわわわ、ち、ちずるさぁん」どうんだうん。
聴いているとなんかこう、身もだえてしまう。だれだ、こんな甘々らぶらぶちゅっちゅっちゅな話を書いたのは! ああ、わたしか! ごめん!
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