スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
line

じゃ

前回、なぜか漫画化の運びとなった『重金属彼女』の元ネタとなった小説、同人版の『重金属彼女』を読みたい? と尋ねたら「読ませろ」という拍手コメントがいくつかあったんで、じゃあ後悔。もとい公開。

ちなみに、同人誌ということもあってやや純愛成分多めなので、お気をつけて。

   重金属彼女


「なあ、イイモノ見せてやろうか?」
 突然、凛子センパイがいった。
 なんですか、イイモノって、と尋ねると、ここだよ、ここ、とにやにやしながら、その小学生なみに小柄な体格に似つかわしく、とてもミニマムだった自分の胸元を指さす。
 んー、としばし考え、
「でも、無いものは見れないですよ」
 と答えたら、腰の入ったフックを頬に叩きこまれた。
 放課後、重音楽部の部室でのことだった。

 重音楽部――。
 そう、決して軽音楽部ではない。軽音楽部は、ちゃんとべつに存在する。
 重音楽部とは、その名のとおり、重たい音楽――いわゆる〈ヘビーメタル〉ミュージックを愛するための部であった。
 部員は、現在のところ二名。
 部の創始者であり初代部長でもあるヘビメタ大好きっ子の凛子センパイと、さほどヘビメタを好きというわけでもない、このぼくである。
 なぜ、ヘビメタが好きでもないのに、重音楽部なんかに入ったのか。
 それはもちろん、凛子センパイのことが大好きっ子だったからである。その真っ赤に染めた髪も、大きくてくりくりした眼も、ちっちゃな身体も、ちっちゃな胸も、乱暴な口も、すぐに手がでる暴力的なところも、みんなみんな大好きだったからである。
 すでに本人には、入部時点で自分の想いを伝えてあった。
 ふん、と鼻で笑いながら、背を向けられた。
 だが、覗ける耳たぶは髪の毛とおなじく真っ赤っかに染まっていたし、おまけに鼻歌でもってジューダス・プリーストの曲の歌メロを奏でていたりもしたから、きっと悪い反応ではなかったのだと思う。だってジューダス・プリーストのボーカル、メタル・ゴッドことロブ・ハルフォードは、彼女のアイドルなのだから。部室の壁にも、そのハゲたオッサンのポスターが貼ってあるし。

「てめえ、あたしにホレてんじゃないのかよ!」
 凛子センパイの怒声が、部室に響く。
 椅子ごと彼女に殴り倒され、床に転がったままガタついた奥歯を頬の上から撫でていたぼくは、起きあがって、いった。
「惚れてますよ、もちろん」
「だ……だったら、もうちょっと、愛のある言葉をだな」
「ですが、センパイの胸が無いのは事実ですし」
 こんどは、顔面を蹴り飛ばされた。
 鼻を押さえながら、床をごろごろと転がる。一瞬だけ太もものあいだにかいま見えた薄桃色の布地を、しっかりと脳内の長期記憶メモリーに叩きこみつつ、痛みにうめく。
「そんなに死にたいのか、おまえ」
「ふぁっふぇー」
 だってー、と涙目になりながらいうと、凛子センパイは無言で部室の隅に立てかけてあった、イナズマのかたちをしたギターを手にとった。
「よっと」
 振りかぶられたので、あわてて「センパイのステキな胸、とても見たいです」と答えた。
「最初から素直にそういえ」
 唇の端を歪めながら、凛子センパイはギターを元あった場所へと戻しにゆく。
 しかし、ギターを置いて帰ってきたときには、もうすでにその唇の歪みは笑みへと変貌を遂げていた。なんとなく正座をして待っていたぼくのすぐそばに、腰に手を当て、立つ。
「よーし、そこまでいうのなら、しかたない、憐れな子羊に見せてやろう」
「お願いします」
 頭をさげると、よろしい、と凛子センパイはうなずいた。
 鼻歌でスコーピオンズのギターリフを奏でながら、ぽつぽつと制服の前のボタンを外してゆく。やがてぜんぶ外し終えると、続けてなかのブラウスのボタンも外し始めた。
「だーん!」
 声を発しながら、大きく服の前を広げる。
「お?」
 なかには、さきほど顔面を蹴りあげられたときに見た、薄桃色の布地と同色の、肩ひもつきの胸当てがあった。
 俗にいう、ブラジャーである。
 まったくふくらまず、ほとんど胸板に平面に張りついているだけといったありさまではあったが、たとえ本来の役割をほぼ果たしていなかったとしても、その胸当ての存在がブラジャーであることに変わりはないだろう。役割を果たせない責任はブラジャーにはないのだし。
「どうだ!」
 えへん、と凛子センパイが、無い胸を張った。
「どうだというのは……なにがですか」
「って、オイ! 感想とかないのかよ! 愛するオンナの下着だろう!」
「……なんでこんなもの、つけてるんです?」
「なんでっておまえ、どうやら忘れてるようだから教えてやるが、あたしは高校生なんだぞ! つけてないほうがおかしいだろ!」
「必要のないものをつけるほうが、おかしいですよ」
 すぱーん、と両頬を手のひらでいきおいよく挟みこまれた。
 殴られて腫れていた側の頬に、涙腺をダイレクトで刺激するたぐいの痛みが走りぬける。ぽろりと、涙がこぼれ落ちた。
「ひ、必要なくて悪かったな!」
「なにやら勘違いしているようですが……センパイ」
「なんだよ!」
 なぜか凛子センパイも、ぐすっ、と鼻をすすりあげる。
「ぼくはセンパイのすべてが、大好きなんですよ」
 びく、とセンパイの身体が、大きく震えた。頬を挟みこんでいた手のひらごしに、その震えが伝わってくる。
「ということは、つまり、センパイの無い胸も大好きなんです」
「な、無い胸っていうな!」
 がー、と顔を近づけて、そして小声で、ささやくように、「すこしはあるもん……」とセンパイはいった。
「知ってます。よく」
「う、うるさいな……」
 センパイが、うつむく。
 顔をあげたときには、ぐにー、と口が曲がっていた。
「もうあたしは、高校生なんだよ……成長の盛りもすぎて……だから、たぶん、ずっとこのままで……せめて、かたちだけでも整えようというあたしの健気な乙女心をだな」
「乙女……?」
「そうじゃなくしたのはおまえだろ!」
「だいじょうぶですよ。ぼく、どんなセンパイでも愛せますから。乙女じゃなくったって、胸がなくったって。幼子のような肢体だって」
「悪かったな生えてなくって。っていうか、もしかしてとは思っていたが……おまえ、やっぱりロリコンだったのか?」
「なんと失敬な。いっておきますけど、ぼくはセンパイが巨乳だったら、その巨乳を愛してますよ。センパイだからです。凛子センパイだからこそ、無い胸を愛せるんです」
「だから無い胸っていうなっつーの。あと、それならもうちょっとヘビメタも愛せよ」
「努力はしています。ですが、ハゲたオッサンを愛するのは想像以上に困難な作業で」
「ロブをハゲたオッサン呼ばわりするな!」
 頬を手のひらで挟みこまれたまま、ひざ蹴りされた。
 ぶしゅー、と鼻から鮮血が噴きあがる。あー、こりゃ鼻の骨、折れたかもー。
「バカヤロウ!」
 鼻血で汚れるのもかまわず、凛子センパイは顔を寄せてきた。
 がばっと唇を吸われる。
 魂を吸いつくさんばかりの、なんとも激しいくちづけであった。
 やりすぎたと思って謝罪を……いや、きっと血を見て興奮したんだろう。
 もちろんそんな飢えた獣のような凛子センパイも、大好きですよ?
 押し倒されながら、手を伸ばし、床に置いてあったラジカセのスイッチを入れる。
 流れだしたAC/DCを、ボリュームを調整して、適度な音量にした。ちょうど、凛子センパイから洩れ始めた声をごまかせるレベルの音量に。




ちなみに、これはあくまでも元ネタなので、実際に掲載される作品はいろいろと変わっております。

次回は、なんだって漫画なの?
小説じゃなくて?
だってオマエ、小説書きだろ?
という疑問に、お答えできる範囲でお答えしたいと思います。
line

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

重金属彼女、第20話公開・・・そして次回最終回!

「かのこん」の西野かつみ先生原作、りすまい先生作画でスクウェア・エニックスの無料Webマガジン「ガンガンONLINE」に月2回連載中の「重金属彼女」の最新話、第20話が本日公開されました!そして、衝撃の次回最終回という告知も・・・。詳細は続きからどうぞ! (つづ...
line
line

FC2Ad

line
プロフィール

西野かつみ

Author:西野かつみ
西野かつみ(にしの かつみ)



もの書き。男。
第1回MF文庫Jライトノベル新人賞で佳作受賞。
2005年10月25日、受賞作の「かのこん」でMF文庫よりデビュー。
2008年3月現在、気がついたら「かのこん」を10冊以上出してた! びっくり!
いまのところまだ続く予定。



なにかご連絡がございましたら、こちらのメールフォームよりどうぞ。

line
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
line
最近の記事
line
月別(表示年指定)
line
カテゴリー
line
FC2カウンター
line
ブログ内検索
line
まんが版(山木鈴さん作です)
かのこん 9 (MFコミックス アライブシリーズ)
かのこん 9 (MFコミックス アライブシリーズ)

かのこん 8巻 (MFコミックス アライブシリーズ)
かのこん 8巻 (MFコミックス アライブシリーズ)

かのこん7 (MFコミックス アライブシリーズ)
かのこん7 (MFコミックス アライブシリーズ)
揉み揉み揉み揉み!
そして海海海海!

4840125473
かのこん 6巻(6) (MFコミックス アライブシリーズ)
双子登場だ!
そして尾てい骨登場だ!(え?)

温泉編。期待どおりのシーンが満載ですぜボーイズ&ガールズ。

けろんぱーなかえるっ娘、澪が主人公のおまけ漫画つきダヨ!

オオカミっ娘、望、登場。
あ、オオカミ男、朔も登場。

三等身のSDキャラがかわいいの。

まんがで読むといろんな意味で威力倍増。
line
自分の書いた本
line
ドラマCD
これはドラマCDとは違うんですが。
アニメにともなって放送されたネットラジオを収めたもの。
耕太役の能登さんとちずる役の川澄さんがあまりに仲が良くて、聴いてるとにまにましますぜ。

アニメの後日談的内容。
ちょっとえっちでちょっぴりおバカ。かのこんの本質をあらわした内容でございます。

かのこん1巻の内容を声で。
「ああん、耕太くぅん……」「はわわわわ、ち、ちずるさぁん」どうんだうん。
聴いているとなんかこう、身もだえてしまう。だれだ、こんな甘々らぶらぶちゅっちゅっちゅな話を書いたのは! ああ、わたしか! ごめん!
line
RSSフィード
line
sub_line
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。